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Japanese Forum for Winter Sports Sciences

ご報告 第18回 冬季スポーツ科学フォーラム新潟

ご案内 第19回 冬季スポーツ科学フォーラム長野
2008年 7月26日(土), 27日(日)信州大学


「新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター」前で 2007.7.29

URL http://home.hiroshima-u.ac.jp/tospo

会報 48号

2008年3月3日発行


  報告

第18回冬季スポーツ科学フォーラム2007新潟

 第18回冬季スポーツ科学フォーラムは、2007年7月28,29日、 新潟市のピッグスワンにある新潟県健康づくり・スポーツ医科学 センターで開催されました。28日は2つのシンポジウム、29日 は一般発表が11題、行われました。

開会にあたり、先の中越地震で亡くなられた新潟県スキー連盟の 故 猪俣孝先生に全員で黙祷をささげた。

シンポジウム「地域における冬季スポーツ競技力向上システム」

第1部 トップ選手から見た地域の競技力向上環境

シンポジストの渡辺靖彦、関塚真美、堀米光男の各氏

渡辺靖彦 選手 アルペンスキー

(チームアルビレックス 2003-04 FIS Far East Cupランキング総合4位等)

群馬県水上町育ちの渡辺氏は、もの心ついたときにはもうスキーを滑っていたとのこと。中学3年 生の時、町のスキー場のナイター営業が増え、自分自身の滑走時間が増えた頃から競技成績も伸び てきた、と体験談を語った。韓国でのFarEastCupの時、難しい雪質にスキーが噛んでしまい転倒。 前十字靭帯を断裂。手術後、高気圧酸素治療や加圧トレーニングを経て復帰したが、その間のリハ ビリプログラムについて、選手にわかりやすく説明することが必要だと提言された。

関塚真美 選手 アルペンスキー

(チームアルビレックス ‘06トリノオリンピック女子回転38位 ‘06全日本選手権大会女子回転優勝等)

スキークラブで指導していたお父様、スキー好きなお母様のもとで、2,3歳でスキーを始め、幼稚園 の時には大会にも出場していたとのこと。野尻湖で水上スキーもよくやっていたそうだ。高校時代 は、授業を終えてから電車で盛田スポーツ財団に通い外国人コーチのもとでトレーニングを重ねた。


高校2年生の時からはナショナルチームに入って遠征する機会が増えたが、その時も盛田スポーツ 財団の人が練習メニューを作ってくれた。関塚選手自身も、遠征する時にはいろいろなコーチから 話を聞いて、自分にあったメニューを選んでいる。たくさん教えてもらった中で、自分の調子が悪 い時にはこんなエクササイズをすればよい、というヒントも得た。高校生の時から基礎エクササイ ズは欠かさずに実践している。

堀米光男氏 クロスカントリースキー

(株式会社小賀坂スキー製作所 ‘00ワールドカップ10kmフリー7位‘94・‘98・‘02オリンピック日本代表)

山ノ内町での小学校時代は野球をやっていたとのこと。冬はクロスカントリーで体力作りをしよう、 ということでスキーを始めたそうだ。小学校では児童の父親がボランティアでクロカンのコーチを してくれていた。中学校では選択専任コーチのもとでかなりきついトレーニングもした。自分でも ある程度の成績は残したいと思い、自主トレも行っていた。高校時代にVO2max はかなり高い値を示していたということだが、ご自身としては、特にそのことを目指したというより結果としてそ うなっていた、という感想を述べた。選手に対する医科学サポートについて、「選手にとってトレー ニングは最初、苦しいものだが、データをとることで成果がはっきり見えてくる。そのことが励み になる」と述べられた。ご自身もデータをとるために名古屋までよく出かけたそうだ。

質議応答

Q. 渡辺選手は、靭帯断裂の後の復帰のめやすが不明確だった、と述べられたが具体的にどういう ことか。

A. 最初、復帰には8ヶ月かかると言われたが、スキー選手から6ヶ月で復帰したという話を聞き、 自分もやってみた。結果として、やってみてよかったということになった。

Q. 靭帯は成熟するのに1年かかる。復帰はしても再び切れるリスクは高かっただろう。関塚選手 は、陸上トレーニングをする時に技術面と身体能力面で目的を分けていらっしゃるのか。

A. 雪上の動きから、ここの筋肉を強くしたいと意識してトレーニングしている。

Q. 今日、冬季スポーツに陰りが見られる。身体を使って雪に中に踏み込んで行こうとする人の数 が減ってきている。シンポジストのみなさんにとって、あの時あれをやったから、という大切な時 期というものがあったか伺いたい。

A. 私(渡辺選手)のスキー人生で道を分けたのは、中学時代にナイター練習ができるようになっ たことだ。全中で70位くらいだった私が、おかげで優勝することができた。優勝することで進路が 開け、メーカーのサポートも受けられるようになった。

A. 私(関塚選手)にとっては、小学校時代の滑走日数が誰よりも多かったことだ。スキーのコー チをしていた父や母のおかげだ。

A. 私(堀米選手)はスキーについては妥協しなかったし、スキーについては自分の思うように生 きてきたと思う。

Q. 中野実業での3年間はどうだったか。

A. 高校時代、スキー中心に学校生活を送ったが、先輩の指導、先輩の「焼き」を通して精神的に きたえられた上に十分なトレーニングができた。選手の道が開かれたので大学ではなく就職した。高 校3年間は私のスキー人生にとって大きなものだったと思う。


第2部 地域における冬季スポーツ競技力向上システム

岸 一成 氏(新潟県スキー連盟競技本部クロスカントリー部長)

新潟県スキー連盟クロスカントリー部では、トップの強化指定選手に加え、 地域での強化選手の育成するシステムが20年以上前から機能しているそう だ。これらの選手に対してなるべく多くの合宿の機会を与えるようにして いるという。また小学生の発掘、育成のために県スキー連名の地区協議会 が年2回の大会を開催し、小学生への動機づけに貢献している。長野五輪に 先だってSAJが招聘したフィンランド人コーチからトレーニング方法を学 ぶとともに、体力測定等の医科学的なサポートも導入している。しかし、 2000年頃からジュニア選手の減少が見られるようになり、不景気による保 護者の負担増で、会社員・自営業コーチの参加が難しくなる等の問題もあ るとの指摘があった。

平井俊雄 氏(盛田スポーツ振興財団事務局長)

高等学校を38年間勤められたうち23年は新井高校のスキー部を担当され ていたとのこと。この冬季スポーツ科学研究フォーラムにも今回で5回目 の参加。盛田スポーツ振興財団は、ソニーの盛田さんが平成2年に、妙高 からスキー選手を育てようという夢をもって創設された。新井の運動公園 に体育館を建て、ここを中心として活動している。現在、日体大から戻っ た皆川賢太郎選手、山川純子選手、池田和子選手らがスロベニアのコーチ といっしょにトレーニングをしている。最近では、インドからトリノオリ ンピックに出場するアルペン女子選手を2人、お預かりしてトレーニング した。オリンピックではまだ、最下位の方だったけれども。長野オリンピッ クの時には、財団からオリンピックに5人出場しようとすごい意欲で取り組んだ。結果として3人出場した。選手が自分たちでトレーニングできる環境をつくるよう努力し ている。財団では、中学生も受け入れている。先輩といっしょになってよい刺激を受けている。昨 年、新井高校から同志社大に進んだ内山選手は柏崎から新井まで毎日1時間半かけ通い、とうとう 全国5位に入ったという。

山谷 剛 氏(チームアルビレックス新潟社長)

アルビレックスは、まずサッカーチームができ、その後、花が欲しいということでアルビレックス・チア・リーダーズができたという。大和証券バスケットボール部からの話で、アルビレックス・バスケットボールができ、4番目にこのチームアルビレックス新潟ができたとのこと。アルビレックスにはさらにランニングチーム、ベースボールクラブもある。サッカーのアルビレックス社長で、専門学校グループの理事長でもある池田氏がウィンタースポーツを盛り上げていこうと設立したチームアルビレックスは、創立4年目を迎え、スタッフは4人。所在地は妙高市の全日本ウィンタースポーツ専門学校内。29人のスキー・スノーボード選手が所属している。将来的には、所属選手が定期的に子どもたちやアスリートを目指す人たちを指導し育成するシステムを作りたいと考えていると山谷氏は結んだ。

質議応答

Q.  お話の中に、「古きよき時の名物オヤジ」という表現が出てきた。手弁当で地元の子供たちに 熱心に教えてくれる、そういう人の力は大きい。関塚選手のお父様もそうであったと思う。私の父 もそうだった。そこから競技団体へうまくつなげていくために何かできないか、ヒントをいただき たい。

A. 選手は地域に戻ってきている。ただ、仕事が多忙であったり、まだ自分の子どもがいないので ちょっと入りにくいというような事情がある。私は「世代交代」という言葉を使ったが、地元に戻っ てきてくれた人にボランティアでどれだけやっていただけるかが、これからの課題だという意味だ。

A. 小学生の世話は親がやらなければならない。財団にも、おじいちゃんが旅館をやっていて孫を 車で毎日送り迎えしている人がいる。小学生の場合、熱心な親とか、地域の「気ちがいオヤジ」が いないと難しい面がある。サラリーマンがローテーションでやる、というわけにはいかない。

A. 現役を引退した選手が、地元で「気ちがいオヤジ」「気ちがいオバチャン」になって子どもたち をびしびしと鍛えている、こんな指導者を育てていかなくてはならないのかもしれない。

司会 おやじから競技団体へとシステムの連続性を考えていく必要性について話題となった。選手 生活を送る上でスポーツ環境への要望を選手の皆さんから聞かせてほしい。

A. 私は、サッカーの観客動員数が気になる。人が観に来るか来ないかは大きな要因となる。人が 集まれば、そのスポーツを子どもたちはやると思う。

A. 子どもたちが、思いきりいっぱいできる環境を考えていったらよい。

A. 選手引退後のシステムが大切だ。コーチをしたい人がコーチをできる環境も必要だ。実際問題、 仕事としてのコーチの職は非常に限られている。私は、せめてスキー業界に残ってジュニア指導を したいと思ってやっている。子どもたちが、今やっているスポーツが一生の仕事として続けられる と思えれば、子どもたちも頑張るだろう。


医科学センターのトレーニングジム

受付をお手伝いいただいた新潟大学の学生さん


フォーラム開催でお世話になった三浦哲氏

一般発表

「スピードスケート競技における高校生を対象としたメンタルトレーニングについて」

○竹田唯史(北翔大学) 小松洋介

インターハイ総合優勝経験のある高校スピード部員に120分×5回の一斉指導メンタルトレーニングを行 い、顧問からも「練習や試合への取り組み姿勢が変化した」との評価を得た 。

「スピードスケート・スケーティング動作の技術評価の検討」

スライドボードトレーニングにおける足圧測定

○小松洋介(北翔大学大学院) 杉本つばさ 山本敬三 竹田唯史 

オフシーズントレーニングに用いるスライドボード上での足圧が、下腿内径角度66度では2相性となり やや非効率、60度では単相性となりより効率的とのデータを得たと報告した。

「アイスホッケー・スラップショットの三次元動作分析」

○折 明宏(北翔大学) 山本敬三

バック直前の氷にブレードをたたきつけシャフトのしなりを利用するスラップショットで、熟練者はグ リップ部を動かさず、助走後に急激なブレーキ動作があるという動作分析結果を報告した。

「幼・少年期におけるスポーツ育成への取り組みについて新思考と新試行」

○高橋 寛(長野県スケート連盟)上原真奈 張淑華 藤居佳子 下村一江

ことば・スポーツ・大会参加・交流を中心とした長野国際交流スポーツクラブ(幼・少年を対象)が、競 技成績は重視しない方針であるにもかかわらず、スケート、ボーリング等の大会でで高い成績を収めたと 報告した。

「心拍数からみた新スポーツ「ゴルポッカ」の運動強度について」

○白川和希(北翔大学大学院)加藤 満 小田史郎 千葉直樹 吉田 真

雪国の冬の運動不足解消のために考案された新スポーツ「ゴルポッカ」は25分のケームで2000歩、平均 心拍数は100~125で高齢者にもふさわしいという研究結果を報告した。

「2006全日本ジュニアスキー選手権大会 クロスカントリー男子10kmのレース分析」

○瀧澤慶太(信州大学大学院) 結城匡啓 三浦 哲

上位選手は、登り坂でのラップタイムがよく、レース後半でもピッチが変わらない傾向が見られた。また 下り坂では心拍数数を落とし、次の登りに備えるなど心拍数のコントロール幅が大きかったと報告した。

「スポーツ指導知識の記述方法と定量化に関する一考察」

 コンピューターシステムに組み込む場合

○多田憲孝(新潟工業短期大学)

プルーク・ボーゲン学習者がシュミレータ−の上で動作すると、板の回旋角度や重心位置などの情報から スキーの進む方向がスクリーン上に反映され、動作が不適切な場合には音声等でアドバイスもなされるシ ステムを開発し紹介した。


「スラップスケートと従来型スケートにおける滑走スピードによる直線滑降動作の変化」

○竹中俊輔(信州大学大学院) 結城匡啓 斉川史徳

スラップではストローク終盤でも下腿の前傾が保たれ重心をより前方へ加速できる。特に秒速10mを超え るとスラップスケートの効果が大きく現れると結論づけている。

「スラップスケートと従来型スケートにおけるカーブ動作分析」

○斉川史徳(信州大学大学院) 結城匡啓 竹中俊輔

カープ動作中、スラップでは重心の前方への移動距離、内側への移動距離ともに従来型より大きく、左脚 の下腿の内傾をプッシュオフまで増加できることから、スラップの効果は左脚において顕著であると結論 づけた。

「スキー技能向上のための動画処理とその実用化」

○牛山幸彦(新潟大学)玉木 徹 橋本 修 五十嵐久人  金子裕之

ゲレンデのスキーヤーの動きをビデオ撮影しながら、直ちに連続写真としてプリントアウトし、画像にア ドバイスも書き込めるという高速でコンパクトなシステムを一般の器機で実現できることを紹介した。

「第16回冬季デフリンピックアルペンスノーボード競技におけるサポート実践について」

○安藤直哉(元全日本ろうあ連盟アルペンスノーボード監督) 竹田唯史 山本敏美

視覚障害者のデフリンピック参加選手のサポートは、当初は身体運動についての表現がうまく伝わらない 等の困難があったが、ビデオや携帯メールをうまく利用することで、金メダル3個の快挙となった。


発表準備中の 折、竹田、小松の各氏


発表に聞き入る参加者

2008年7月26,27日

第19回 冬季スポーツ科学フォーラムを開催

会場 長野市 信州大学


皆様のご参加をお待ちいたしております。

運営委員会

2007年7月28日、新潟県スポーツ医科学センター研修室で開かれた運営委員会では、次のように 提案され了承されました。

1. 次回の19回フォーラム開催は、信州大学の結城先生に当番幹事をお願いする。

2. 第20回の記念フォーラムは、北海道の北翔大学の竹田先生を中心に幹事をお願いする。

3. 記念事業として、冬季スポーツ科学に関する用語を整理し共通理解できるものを作成したい。

4. 第17回の札幌でのフォーラムのプロシーディングは発行に向けて編集作業が進行中である。

渡部和彦先生退職記念事業

当研究会の中心である渡部和彦先生が、平成20年3月31日をもって、広島大学をめでたく定年 ご退職されることとなりました。記念事業会の発起人の皆様よりご案内をいただきましたので、 お伝えいたします。

1.最終講議

   題目「姿勢の研究を歩む~V字ジャンプから高齢者のフィットネス~」

   日時 平成20年3月22日(土) 13時~14時

   会場 広島大学教育学研究科 K棟 102号教室

2. 記念祝賀会 同日 夕刻より

  (祝賀会の申込期日2/20が過ぎてしまったことをお詫び申し上げます。)

 会費納入のお願い

2008年度の会費をお願いする時期となりました。会員の方は同封の振込用紙にてお願いします。 また、会員でない方も同封の振込用紙で会費を納入されると会員登録できます。ぜひ、ご登録ください。

 入会のお問合せ e-mail: iizuka.kuniaki@gol.com  まで。

冬季スポーツ科学研究会

事務局 739-8524 東広島市鏡山1-1-2    広島大学教育学部

健康スポーツ科学講座 生理学研究室 渡部和彦

直通電話 0824-24-6840 直通fax 0824-24-5265

会報作成 飯塚邦明  電話048-874-3159