トレーニング講習会

スキージャンプ選手のトレーニング

講師 山本敬三   司会 森 敏


プログラム一番の「トレーニング講習会」は野沢温泉村スキー場のゲレンデにあるトレーニングセンターに、野沢温泉スキークラブのメンバーを集めて開催された。講師の山本敬三氏(北翔大学)は、任天堂のゲーム機器バランスWiiボードとパソコン・プロジェクターをつなぎ、会場のスキージャンパーたちの踏み切り動作をの足圧データをつぎつぎと測定、表示しながら、トレーニングに役立つヒントをジャンパーたちに提示していた。

○一山ニ山、力曲線

yamamoto

集まった男子8人、女子2人のスキージャンパーにWiiボード上でシミュレーションジャンプをしてもらい、それぞれの選手の踏切り時の足圧曲線をプロジェクターで映した。選手によって、力曲線が一山になる人とニ山になる人がいた。山本講師は、「これはどちらがよい、ということではないが・・・」と前置きしてから、二山曲線の選手に再びWiiボードに乗ってもらった。そして、今度は、お尻を高くした状態から踏切り動作をしてもらい、力曲線が一山に変わることを示した。「尻を高くし、膝が伸びた状態からジャンプすると一山になります。ですから、ニ山曲線になる人の場合、最初の山は膝が伸びる時の力、次の山が股関節や足首が伸びる時の力ということがわかります。」さらに、「Wiiボードのような簡単な装置を使って日頃から力曲線を見ていれば、調子のよい時、悪い時、どこが違っているのか、知ることができるでしょう。ちょうど、体調がぐれない時に体温計で熱を計ってみるような使い方ができるのではなしでしょうか。」と講議の前半を締めくくった。

○左右のバランス

山本講師の話は、さらに踏切り動作中に、力の中心が前後・左右にどのように動くかを、選手たちの足圧データを使いながら示した。「踏切り動作中に力の中心はまず、踵側に、それからつま先がわへと移りますが、この時、左右どちらかに若干ずれることが多いのです。ジャンプして姿勢が片寄ってしまうという経験はあると思います。左右のバランスという点で、まっすぐ下がってまっすぐ上がるのがよいのです。」

TrainingLec

○Wiiリモコンが角度センサー

任天堂のWiiボードに続いて、Wiiリモコンを取り出した次に山本講師は、「これはWii FItのゴルフ練習用のものですが、角度センサーにもなります。」と述べ、スキージャンパーの背中にこのリモコンを括りつけて空中での体幹の角度を測るようなこともできるかもしれない、とアイデアを語りました。 最後に、オランダ製の本格派のジャイロ付角度センサー、加速センサーを6個、スーツにつけて空中動作を取り込めるシステムが紹介されました。


【感想】取ったデータを素早く選手にフィードバックすること、科学者とコーチ・選手との間のギャップをうめること、これらは永年、スポーツ科学のテーマであったと記憶します。山本講師の市販の装置を使ってその場で選手たちに力曲線の話をする姿、オリンピック選手てあった森敏氏が、スポーツ科学者として選手に語りかけている姿、かつては夢だったことを、気鋭の科学者たちが実現しているのだ、と感じました。(飯塚)